「食品廃棄の裏側」を読んで

千葉県で産業廃棄物行政を担当。不法投棄常習地帯といわれた地域で監視チームリーダーを務め不法投棄ゼロを達成した石渡正佳氏の著になる「食品廃棄の裏側」。
新聞や雑誌の記事などからだけでは見えてこない現場の課題が描かれている。

食品リサイクル法は2001年に施行されたが、15年たった今も、多くの食品が捨てられ、そのリサイクルもうまく回っているとは言えない状況にある。

著者は、2つの生産調整が必要であるとする。

1 新しい食品を作りすぎない
2 使われもしない大量のリサイクル肥料や飼料を作らない

そして、食べられるものは捨てずに食べる仕組み、リセール市場の整備が必要であり、そのための法整備を急ぐべきとする。

また、食品リサイクル法でリサイクル方法を6つに限定しているのは問題と指摘し、使い道のないリサイクルではなく、サーマリサイクル、メタンガス化、炭化、サプリメントでの利用ほか、他の方法への転換が必要としている。

食品リサイクル法が施行され、リサイクル率が9割以上になっているが(実は私も、あの法律ができていい方向にいっているんだなあと思っていたクチなのだが)、農水省の計算式は、例えば廃棄物が転売されようが不法投棄されようがリサイクル率の計算に入ってしまうという「リサイクル偽装率計算式」であると著者は言い切る。

まずはこういう状況にあるということを、私たち一人一人が知ることが大事だと思う。私たちは誰もが食べなければ生きていけず、無駄な食料を作るために、また使われもしない肥料や飼料を作るために土地やエネルギーを使っている余裕など、本来ないはずなのだから。