寝台特急は、働く母の味方でもありました

寝台特急あけぼのが最後の運転を終えた。

 

実は寝台での旅が好きだ。

息子がお腹の中で8ヶ月という時にも、タイで、飛行機ではなく、寝台車をあえて選んで16時間、冷房のないベッドに揺られた。夜に電車が停車するたびに風がとまり、あまりの暑さに目が醒めたのもなつかしい。一番安いチケットで乗ったので、周りは現地の人ばかり。朝起きるとタイ語と、人々が何やら買い込んで乗ったらしい食べものの匂いとでいっぱいだった。

 

若い頃は宿泊代+飛行機を考えれば寝台で夜に移動の方が安いと考え、国内旅行でもずいぶん利用した。

子どもたちに夕飯を食べさせてから夜行に乗る、そんなこともあった

近くに助けてくれる親が住んでいるわけではなかったので、実は3年ほど前までは夜にプライベートでの外出をするのは年に2~3回あるかないかだった。今の私しか知らない人は驚くけれど。

 

細々ながら、少しずつ仕事の場と時間を広げてくる中で、地方での講演やワークショップの依頼をいただくようになると、困るのが子どもをどうするか。子連れ出張も何度もさせていただいた(許してくれた方々にひたすら感謝!)。

 

遠い地方での朝からの仕事の依頼の時、そしてさすがに子連れは無理な内容の時には、前泊せずにすむ夜行はありがたかった。

 

子どもたちに夜ご飯を食べさせ、仕事から戻った夫とバトンタッチして夜行に乗る。早朝のホームに降りたち、その土地の空気を吸う。そしてしばし休むことのできる喫茶店を探す。夜行列車の寝台で、見知らぬ土地の早朝のカフェで、1人で好きにすごせることに解放感を感じた。

いろいろな想い出がある寝台特急。

旅をすることは、普段とは違う時間と場所を、過程を味わうこと。

目的地までスピーディに行って、さっさと戻って、だけでは味わえない「風情」を感じるのが寝台特急だった。

なくなってしまうのが、とても寂しい。