暗澹たる気持ちになる「(株)貧困大国アメリカ」

ルポ貧困大国アメリカ」「同II」に続く、堤未果さんのシリーズ完結編なのだそうだ。

前2冊は未読なので、この一冊だけの感想となるが、「暗澹たる思い」というのが一番ぴったりくる。

食の仕事をしているので、アメリカの食を牛耳る企業の話、種が独占される話にとくに新しいものはなかったが、教育について、地方自治については、これが事実なら驚くをこえてあきれるしかない。

「貧しい人間に自分たちの税金を使われてたまるか!」完全民間経営自治体サンディ・スプリングスに人の醜さの極限をみた

人の醜さが哀しく情けなくなったのは、この件。


ハリケーンカトリーナで大きな水害に見舞われたジョージア州では、水没の被害にあった住民のほとんどがアフリカ系低所得者層だったことから、アトランタ近郊に住む富裕層の不満が爆発。

「なぜ自分たちの税金が、貧しい人たちの公共サービスに吸い取られなければいけないのか?」

そして彼らが作ったのが「完全民間経営自治体サンディ・スプリングス」。
税金を低所得者層の福祉その他にとられずに最も効率よく自分たちのためだけに使える自治体。そして、噂は広まり、世界中から視察がひきもきらずにやってくるという。

アメリカはどこにいってしまうのだろう?
世界はこうして「株式会社化」していってしまうのだろうか?
人と人とが共感しあう小さなシアワセはそこには存在しない。
金を通じてしか、たぶん。

鬼束ちひろの「月光」の歌詞が浮かんだ。
こんなもののために生まれたんじゃない 」